
ぼくは、犬との暮らしを、ときどき「家づくり」に例えます。
家には素敵なインテリア(しつけ)を揃える前に、まず、家族が安心して眠れる、頑丈な「土台」と「柱」が必要ですよね。
もし今、愛犬が落ち着かなかったり、興奮しやすかったりするなら。
それは、しつけの問題ではなく、その「土台」が、今、ほんの少しぐらついているのかもしれません。
ぼくが考える「土台」とは、犬が「安全だ」と心から感じられること。
物音などに怯えることなく、家の中に安心できる居場所がある、「ここは大丈夫だ」と信じられる環境です。
そして「柱」は、健やかな体。十分な睡眠、新鮮な水、バランスの取れた食事。
どこか痛いところや、不調がないか。
この土台と柱がしっかりして初めて、犬は「犬らしいこと」
——例えば、思いきり体を動かしたり、匂いを嗅いで世界を知ること(探索)——を、心から楽しめるようになります。
色々な「しつけ」を試しても、空回りしてしまう時、ぼくらはつい「やり方」が悪いんだ、と思いがちです。
けれど、本当の理由は、もっと手前のところにあるかもしれない。
犬はまだ「学び」の段階ではなく、「安心」を必要としている段階だった。
そんなことが、本当によくあります。
"しつけ"とは、犬の行動を無理に変えることではありません。
その子の土台を、ひとつずつ一緒に見つめ、ご家族にとっても心地よい形に整えていく。
そのプロセスだと、ぼくは思います。
愛犬の「今」を、一度、その視点で見直してみませんか。
そのための「なぜ」を、一緒に探していきましょう。